「プラスチックごみを減らすために、パッケージを紙に変えよう」——この脱プラの流れを象徴したのが、2019年に話題となったキットカットの外袋の紙パッケージ化でした。
例えば、スーパーの売り場で手に取ってみても「あれ? 本当に紙なの?」と感じたり、最近では以前ほど紙パッケージ化のニュースを耳にしなくなったと感じる方も多いはずです。しかし、そこには品質保持との間で生じる大きな技術的ジレンマが存在します。
そのため、本記事ではネスレや味の素などの大手企業の実績データをもとに、紙パッケージの実際の効果と直面した技術的限界を解説します。さらに、1粒の吸湿も許されない医薬品・サプリメント包装が取るべき現実的な脱プラ戦略をご紹介します。
1. なぜ店頭で「紙パッケージのキットカット」に気づきにくいのか?
ネスレ日本は2019年9月、主力製品であるキットカット大袋タイプの外袋を紙パッケージへ変更し、年間約450トンのプラスチック削減を見込む取り組みを発表しました。しかしながら、完全なオール紙化には至っていません。なぜなら、中身のおいしさを守る防湿性が必要だからです。
「外袋は紙、小袋はフィルム」に残された理由
具体的には、紙パッケージ化されたのは「大袋(外側の袋)」のみで、中身の個包装(小袋)は従来のプラスチックフィルムのままです。例えば、チョコレートやウエハースは湿気や酸化、光に極めて弱いため、紙単体では品質を保てません。その結果、外袋の内側に極薄フィルム層を施しつつ、直接食品に触れる個包装はフィルムを維持する設計が取られています。
※出典:ネスレ日本「『キットカット』の外袋を紙パッケージへと変更」(2019年9月)
2. 味の素など食品大手が挑む「紙パッケージ化」の実績
キットカットに続き、調味料大手でも確実な紙パッケージの導入が進められています。
例えば、味の素株式会社では2022年より主力商品のパッケージを紙パッケージへと切り替えました。包材における紙の重量比率を50%以上に高めた結果、年間約12トンのプラスチック廃棄量削減を実現しています。このように、企業の環境配慮アクションとして紙パッケージは大きな役割を果たしています。
※出典:味の素株式会社「パッケージを紙包材に変更」(2022年1月)
3. 最近「紙パッケージ化」を聞かなくなった理由とジレンマ
各社の努力によって削減実績が出ている一方で、なぜ最近は全面的な紙パッケージ化の話題が一服したように見えるのでしょうか。具体的には、産業全体が直面した3つの現実的な壁があります。
「全面紙化」から「部分的な減プラ」へのシフト
すべてを紙パッケージにするアピールから、フィルムの厚みを極限まで薄くする「薄肉化(ダウンゲージング)」へ業界全体が移行しました。そのため、無理のない現実的な減プラが主流になっています。
コストと流通強度のトレードオフ
また、特殊なバリア加工を施した紙パッケージは製造コストが割高です。さらに、紙はフィルムに比べて伸びにくいため、輸送時の摩擦や落下衝撃で破れ(ピンホール)が発生しやすい課題もあります。
複合素材によるリサイクルの難しさ
加えて、紙の裏にフィルムを貼った複合素材はマテリアルリサイクルが困難です。したがって、環境省のプラスチック資源循環方針に沿った高度な分別設計が求められています。
4. 医薬品・サプリメント包装が選ぶべき「紙パッケージと脱プラ戦略」
お菓子であれば「賞味期限内で消費してもらう」という設計が成り立ちます。しかし、医薬品やサプリメントでは、わずかな吸湿による有効成分の失活は絶対に許されません。そのため、医薬品においては「無理にすべてを紙パッケージに変える」のではなく、以下の2軸で進めるのが最も合理的です。
| 包装の段階 | 推奨される脱プラ・環境アプローチ |
|---|---|
| 一次包装(PTP・ボトル等) ※製品に直接触れる部分 |
無理な紙パッケージ化は避け、「高品質な薄膜ハイバリアフィルム」による樹脂使用量の削減(薄肉化)を推進。バリア性能を落とさずにプラスチック量を最小化する。 |
| 二次包装(個箱・ピロー袋等) ※外側の包装 |
外箱への「FSC認証紙」の採用や、外装ピロー袋の「紙パッケージ化(紙ラミネート)」など、薬剤安定性に影響を与えない部分から優先して環境対応素材に切り替える。 |
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